両手が体温を隔てる
汽水域の水草が水流で揺らいでいた。
磯、漁船、浜、全て液晶の奥の話だと思っていた。
砂浜は水を含んでずっしりしていたし、水を多く含み泥になった砂はたぷたぷしていた。
海は思ったよりしょっぱかったし、スーパーの生鮮売り場の香りがした。
波は毎回形が違った。近くで見ようと何度か近付き、その度に想像より伸びる波に靴を濡らした。
荒く削れた岸壁も、釣りをしているおじさんも、遠くまで伸びる船着場も、自分には程遠いスケールの存在で、ミニチュアを見ているような感覚で全部が可愛かった。
砂浜に描いたニコちゃんマーク、もうとっくに波に飲まれて均されて無くなってるはずなのに、なんだかまだそこにあるような気がする。もしくは、まだあってほしいという希望的観測から練り出された期待なのかもしれない。
2022/03/09.10